糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
糖尿病患者における血清および尿中Znの変動
腎糸球体機能との関係
相楽 衛男工藤 幹彦八代 均牧野 勲武部 和夫
著者情報
ジャーナル フリー

1982 年 25 巻 6 号 p. 697-704

詳細
抄録

生体におけるZnの日内変動, 日差変動の特徴を検索し, creatinine clearance (Ccr) を指標として糖尿病性腎症における軽症より重症に至る過程でのZn代謝を検討した.早朝空腹時にCcrを施行し, この血清および尿より血清Zn濃度, 尿中蛋白濃度, 尿中Zn濃度, 分時尿中蛋白排泄量 (尿中蛋白排泄量), 分時尿中Zn排泄量 (尿中Zn排泄量), Zn-clearance (Czn), Czn/Ccrを測定し以下の結果を得た.
1. 治療別では健常者群の血清Zn濃度は81.2±3.2μg/dl (Mean±S. E.以下同じ), 尿中Zn排泄量は18.7±5.1×10-2μg/minであった.これに比して糖尿病患者群の血清Zn濃度は経口剤群 (P<0.01), Insulin群 (P<0.001) で有意の低値を示し, 尿中Zn排泄量ではInsulin群のみ有意の高値を示した (P<0.01)
2. 尿中蛋白濃度と尿中Zn濃度の関係では有意の一次相関を認めた (Y=0.73X+18.9, r=0.570, p<0.001)
3. Ccrと血清Zn濃度の常用対数との間に有意の相関を認めた (y=47.7 Log X-19.0, r=0.656, P<0.0001)
4. 尿中蛋白排泄量はCcrが低下するに従い著明に増大し, 尿中Zn排泄量はCcr55~70ml/minおよび100~115ml/minの域で健常者に比し有意に増加した (p<0.001).CznはCcr75ml/min未満および100ml/minの各域で健常者群に比し有意に増加した.Czn/CcrはCcrが低下するにつれて著明に増大した.以上から糖尿病性腎症が軽症の場合はZn排泄は蛋白排泄と密接な関係があるが, 中等症から重症に至る過程では能動的にZn排泄を促す物質の出現を窺知させ, 生体Znは欠乏する事を示唆している.

著者関連情報
© 社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top