抄録
ブドウ糖負荷試験 (OGTT) で耐糖能異常 (IGT) とインスリン過分泌反応を示したKline飴lter症候群の1症例を経験し, 父親では正常型血糖曲線, 軽度のIRI過分泌反応を認めた.
症例は23歳男性, 長身で女性化乳房および睾丸の萎縮を認め, 睾丸生検で精細管の基底膜の肥厚, 精細胞の硝子様変性がみられた.尿中gonadotmpin 24U/dayと正常上限, 血清estrone 95.3pg/mlと高値を示し, LH-RH負荷試験でLHおよびFSHとも過剰反応を示し, TRH負荷試験ではTSH, PLは正常反応であった.骨髄細胞培養による染色体検査では染色体数47, XXY型であった.H-LA型はA9 AW33B12 (Bw44) Cw1であった.50gOGTTで空腹時血糖値94mg/dl, 60分後頂値169mg/dlと上昇し, 耐糖能異常を示し, IRI反応は前値37.6μU/mlより30分後246.1μU/mlと速かに上昇し, 120分後226.5μU/mlと長く高値を持続する過剰反応を示した.このような傾向はテストステロン投与4ヵ月後にも認められた.抗インスリン抗体は陰性であった.
患者の父親はOGTTで正常型, 軽度のIRI過分泌反応を示したが, 母親は血糖値, IRI反応とも正常であった.
Turner症候群, Klinefelter症候群の患者および近親者に糖代謝異常が高率に認められることから性染色体異常と糖代謝異常との間に密接な関係があるものと推測される.