抄録
厳格な血糖制御が糖尿病性細小血管合併症の発症, 進展阻止におよぼす影響を検討すべく, 以下のprospective studyを11例のインスリン治療中の糖尿病患者に施行し, 今回は, その3ヵ月間の成績をまとめた.
厳格な血糖制御を行うべく, ベッドサイド型人工膵島による血糖制御, 携帯型インスリン注入システムによるインスリン皮下持続注入療法, そして速効性インスリンと中間性インスリンを組合せたインスリン頻回注射療法によるintensive glycemic controlを行った.
1) 従来のインスリン療法時に比し, 血糖日内制御は, M値, 平均血糖値, MAGE値のいずれにても良好な結果を得, HbA1値も3ヵ月後には有意の低下を認めた (p<0.001).
2) 糖尿病性細小血管合併症の推移は, 網膜症では, 螢光眼底所見で血管透過性亢進9例中3例において改善を認め, 腎症では, 尿中24時間総蛋白排泄量とβ-2-マイクログ獄ブリン排泄量はいずれも有意に改善した (p<0.05).神経症では正中神経の神経伝導速度は有意に改善したものの (p<0.05), 起立時収縮期血圧の変化では, 有意の改善はみられなかった.
この成績から, 3ヵ月という比較的短期間でも, 厳格な血糖制御を維持することにより, 糖尿病性細小血管早期合併症の改善し得ることが示唆された.