糖尿病
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26 巻, 10 号
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  • 佐中 真由実, 大森 安恵, 嶺井 里美, 東 桂子, 秋久 理真, 本田 正志, 大内 広子, 平田 幸正
    1983 年26 巻10 号 p. 995-1002
    発行日: 1983/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    近年, 発症年齢の若い糖尿病妊婦が増加し, 10年前とはその臨床像も変化してきた.わたくしたちは, 昭和39年2月から57年3月までの約18年間に, 糖尿病妊婦89症例, 109分娩, 110児を経験したので, その臨床像を解析し, 経年的な変化を検討した.
    18年間における総分娩数は8804例で, 糖尿病妊婦分娩例の頻度は1.23%であった.平均糖尿病発症年齢は23.2歳, 平均糖尿病罹病期間は5.9年であり, 15歳以下で糖尿病を発症し, 罹病期間の長い糖尿病妊婦が増加する傾向にあった.この89症例のうちType I糖尿病は26例 (29.2%), Type II糖尿病は63例 (70.8%) と, Type II糖尿病妊婦が圧倒的に多かったが, 昭和50年以後Type I糖尿病妊婦が増加する傾向にあった.妊娠中の糖尿病の治療は, インスリン治療が74.3%と最も多かった.糖尿病性網膜症を合併した妊婦は48.6%と多く, 約半数に悪化傾向が認められた.妊娠前から腎症を合併していた妊婦は1例, 妊娠を契機に腎症の合併を促進したと考えられるものが2例, 産後3.5年で血液透析を施行しているものが1例いた.また無症候性細菌尿を合併していたものが17.4%と多かった.
    平均分娩時期は39.3週, 分娩様式は帝王切開が48.6%と約半数をしめた.
    周産期死亡率は5.6%であり, 最近子宮内胎児死亡はなくなり, 先天奇形による死亡が増加してきている.妊娠37週以後に生まれた児の平均生下時体重は34389であったが, HFDが33.6%, 4kg以上の巨大児が12名いた.先天奇形は16.4%, 新生児合併症としては低血糖が36.2%と高率に認められた.
  • 杉山 博通, 関口 祐司, 宮野 龍美, 田中 明, 若林 哲雄, 内村 功, 前沢 秀憲
    1983 年26 巻10 号 p. 1003-1009
    発行日: 1983/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    比較的短期間の糖尿病コントロールに伴い, 深呼吸時R-R間隔変動が改善した症例を経験した.症例1, 59歳女性.糖尿病罹病歴7年.インスリン持続皮下注法によりbrittle型の血糖変動が安定化し, 1ヵ月間にヘモグロビンA1 (HbA1) が19.6%から12.0%と低下した.このときR-R間隔変動は37msecから72msccと増大した.症例2, 52歳男性.糖尿病発見時空腹時血糖 (FBG) 478mg/dl, HbA1 16.0%が, 食事療法により43日後にFBG 107mg/dl, HbA1 12.5%となった.このときR-R間隔変動は244msecから339msecと増大した.そこでFBG・HbA1からみた糖尿病コントロール状態がR-R間隔変動に影響を与えるか否かを検討するため, 外来通院中の糖尿病51例 (男性22例, 女性29例, 57±10歳) を対象として, 約1ヵ月間隔で2回, 朝食前にFBG・HbA1・R-R間隔変動を測定した.その結果FBG変化率とR-R間隔変動変化率との間には関連を認めなかった.HbA1変化率が10%以上の症例において, R-R間隔変動変化率はHbA1改善群6±14%, HbA1増悪群-20±23%と両者に有意差 (p<0.02) を認めた.以上より, R-R間隔変動は過去1-2ヵ月間のコントロール状態に影響される可能性が示唆された.
  • 皆上 宏俊, 黒田 義彦, 中山 秀隆, 青木 伸, 門田 悟, 牧田 善二, 種田 紳二, 三沢 和史, 対馬 哲, 中川 昌一, 工藤 ...
    1983 年26 巻10 号 p. 1011-1017
    発行日: 1983/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    腎尿細管細胞に対するglucagonの作用を調べる目的で以下のような実験を行なった.
    Sprague-Dawiey系ラット腎からcoUagenase digestion, nylon mesh filtrationにより尿細管細胞分画 (以下TRFと略す) を得た.
    125I-glucagon binding studyでは, TRFによる125I-glucagon degradationを最少限とするため4℃, 500μM bacitracin存在下でincubationを行なった.specific 125I-glucagon bindingは30~60分でplateauに達し, TRF蛋白量とspccific 125I-glucagon bindingの間には, 蛋白量2.3mgまではほぼ直線関係があった.種々の濃度のnative glucagonを加えた際のdisplacement curveより求めた50%binding inhi-bitionは, 約27ng/mlであった.また, Scatchard plotはcurvilinearとなりaffinityの異なる2つのreceptor sitesの存在, あるいはnegative cooperativityの存在が示唆された.highafiinitysiteの結合容量は約0.375ng/1mgTRFproteinで, 親和定数は約0.17×109M-1であった.
    TRFにglucagonを加えcyclic AMPの生成につき検討した.TRFにglucagon (5μg/tube) を加えると, cyclic AMPは10分までほぼ直線的に上昇し, TRF蛋白量とcyclicAMP反応にも2mgまでは直線関係があった.TRFに種々の濃度のglucagonを加えるとcyclicAMPはdose dependentに上昇し, half maximum stimulationは約12.5ng/mlであった.
    以上の結果から尿細管細胞にはglucagon reccptorおよびglucagon scnsitive adenyl cyclase systemの存在することが示唆された.
  • 萱沢 文男
    1983 年26 巻10 号 p. 1019-1024
    発行日: 1983/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    38例の正常者および65例軽症糖尿病患者について, 硝子体螢光濃度測定を行い, 下記の結果を得た.
    1.水晶体自発螢光は, 糖尿病患者において, 正常者よりも有意に高値 (p<0.05) を示した.
    2.網膜而, 硝子体, 前房内螢光強度は, 糖尿病群と正常群の間で, 平均値に有意差はみられなかったが, 分散が大きく, また後部硝子体螢光強度 (1時間値) で, M+2S.D. (M: 正常者の平均, S.D.: 正常者の標準偏差) 以上の値を示す比率は, 正常者に比して有意 (p<0.05) に高かった.
    3.罹患年数, コントロール状態, 高子血圧の有・無と, 硝子体螢光濃度の問に有意差は認められなかった.以上の結果より, 網膜症の認められない糖尿病患者において, 血液網膜関門が, すでに障害されている症例が存在することが, 示された.
  • 人工膵島の応用
    八木 稔人, 笹井 智令, 山崎 義光, 伯井 信美, 朝川 信之, 河盛 隆造, 七里 元亮, 阿部 裕
    1983 年26 巻10 号 p. 1025-1031
    発行日: 1983/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    膵α細胞のグルカゴン分泌特性は, 共存する膵β細胞機能が影響するため, 未だ詳細に解明されたとはいえない.
    そこで人工膵島をresearch toolとして応用, 組み込まれたグルカゴンまたはブドウ糖注入アルゴリズムの注入規定パメメータを変換し, 膵全摘糖尿病犬のインスリン低血糖よりの血糖回復曲線を正常犬のそれと比較検討することにより, 膵α細胞のグルカゴン分泌特性, および作用特性としての肝よりのブドウ糖放出動態を解明せんとし, 以下の結果を得た.
    1) 膵α細胞グルカゴン分泌特性は, 血糖値の低さに対する比例動作と血糖の降下率に対応した微分動作の加重和として表現することができた.この際のグルカゴン分泌の時間遅れは10分と考えられた.
    2) ブドウ糖注入にて低血糖回復曲線を再現する場合, 血糖値の低さに対する比例動作のみで充分であった.この際ブドウ糖注入の時間遅れは20分であった.
    3) 正常犬と同様の低血糖よりの回復に要するグルカゴン注入量, ブドウ糖注入量は2時間あたりそれぞれ250ng/kg, 237mg/kgであったことからグルカゴン注入率1mg-1・kg-1・min-1は肝臓よりのブドウ糖放出率1ng-1・kg-1・min-1をもたらすものと考えられた.
    以上の成績は, 膵縦細胞グルカゴン分泌の動特性が “比例・微分動作”, 肝に対するグルカゴン作用特性が “10分の時間遅れを伴った一次遅れ反応” であることを示唆した.
  • 3ヵ月間の短期治療効果
    鮴谷 佳和, 坂東 一雄, 桂 賢, 河盛 隆造, 七里 元亮, 阿部 裕, 中田 良和, 泉 寛治
    1983 年26 巻10 号 p. 1033-1039
    発行日: 1983/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    厳格な血糖制御が糖尿病性細小血管合併症の発症, 進展阻止におよぼす影響を検討すべく, 以下のprospective studyを11例のインスリン治療中の糖尿病患者に施行し, 今回は, その3ヵ月間の成績をまとめた.
    厳格な血糖制御を行うべく, ベッドサイド型人工膵島による血糖制御, 携帯型インスリン注入システムによるインスリン皮下持続注入療法, そして速効性インスリンと中間性インスリンを組合せたインスリン頻回注射療法によるintensive glycemic controlを行った.
    1) 従来のインスリン療法時に比し, 血糖日内制御は, M値, 平均血糖値, MAGE値のいずれにても良好な結果を得, HbA1値も3ヵ月後には有意の低下を認めた (p<0.001).
    2) 糖尿病性細小血管合併症の推移は, 網膜症では, 螢光眼底所見で血管透過性亢進9例中3例において改善を認め, 腎症では, 尿中24時間総蛋白排泄量とβ-2-マイクログ獄ブリン排泄量はいずれも有意に改善した (p<0.05).神経症では正中神経の神経伝導速度は有意に改善したものの (p<0.05), 起立時収縮期血圧の変化では, 有意の改善はみられなかった.
    この成績から, 3ヵ月という比較的短期間でも, 厳格な血糖制御を維持することにより, 糖尿病性細小血管早期合併症の改善し得ることが示唆された.
  • 森田 須美春, 中田 邦也, 石原 一秀, 吉田 泰昭, 土井 邦紘, 馬場 茂明
    1983 年26 巻10 号 p. 1041-1045
    発行日: 1983/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病の診断に経ロブドウ糖負荷試験は広く用いられているが, その間, 連続血糖測定を施行し, その解析を行なった報告は数少ない.
    著者らは, 24歳から35歳の19例の健常者を対象に, 759経口ブドウ糖負荷試験時の連続血糖測定をBio-stator®を用いて行なった.
    Biostator®にて得られた血糖値は, Autoanalyzer (ブドウ糖酸化酵素法) と良好な相関関係を示した (r=0.975, Y=0.949X+2.678).
    ブドウ糖負荷後の血糖曲線は, 負荷後平均45.8±4.1分 (mean±SE) でピークを示し, 一時下降するが, その後再び上昇して平均132.8±6.1分後に第2のピークを形成し, 全体として2峰性のパターンを示すことが判明した.この時の平均血糖値はそれぞれ, 142.3±3.3,109.9±3.7mg/100mlであった.しかし, 従来の前, 30, 60, 90,120分および180分の採血方法では, 19例のうち2例を除き2峰性血糖曲線を推察することはできなかった.
    また, 15分ごとに測定したIRIの変動も血糖と同様の2峰性を示した.なお, 経過中, glucagon, cor-tisol, growth hormone, catecholamineの有意の上昇は認められなかった.
    したがって, 健常者においては, 759経ロブドウ糖負荷試験における血糖曲線ならびにIRIの変動曲線は, 従来の採血時間ではほとんど推察のできない2峰性を示すことが明らかとなった.しかし, その機序は不明であり, 今後の検討を要す.
  • 伊藤 景樹, 横山 淳一, 大野 誠, 斎藤 茂, 景山 茂, 池田 義雄, 種瀬 富男, 阿部 正和, 野沢 真澄
    1983 年26 巻10 号 p. 1047-1054
    発行日: 1983/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    膵癌と診断され, 膵全摘術 (同時に胃を2/3切除, 十二指腸を全切除) を受けた63歳の女性の血中グルカゴン動態を追求するために種々の負荷試験を行なうとともに人工膵島 (Biostator®) によりfeedbackcontrolを行ない, その成績を検討した.
    アルギニン負荷試験, インスリン低血糖試験, 経静脈的ブドウ糖負荷試験では, Immunoreactivegluca-gon (IRG), Totalglucagon-like immunorcactivity (GLI) ともに反応が認められなかった.これに対し, 経ロブドウ糖負荷試験では, IRG, TotalGLIともに反応が認められたが, これは経口的に負荷したブドウ糖が胃腸管を直接刺激してIRGおよびGLIを分泌させたことなどが考えられた.
    このように本症例では膵全摘後にも膵外IRGの存在が認められ, それが血糖レベルの急激な変化やアルギニン刺激に感受性がなく, 消化管因子による分泌刺激を受けやすいなどの性格がうかがわれた.
    人工膵島によるfeedback controlでは, 総インスリン需要量は56単位/日であり, ブドウ糖は少量注入されたのみであった.このコントロール後, 症例はウルトラレンテインスリンのような遅効性のものに加えて, 速効性のインスリンを各食前に注射すること, および血糖の自己測定を行なうことにより, 比較的良好なコントロール状態を維持している.
  • 1983 年26 巻10 号 p. 1055-1078
    発行日: 1983/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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