糖尿病
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トルブタマイドの脱共役作用に関する研究 (続報)
勝又 一夫勝又 義直
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1983 年 26 巻 7 号 p. 697-702

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抄録

すでに我々はトルブタマイドの脱共役作用はEGTAによって抑制され, Ca2+により促進されることから, Ca2+と密接な関係があることを示した。今回, トルブタマイドの脱共役に及ぼすコハク酸の濃度, カルニチン, ミトコンドリアのagingの影響を検討し, さらにCa2+の作用を追求せんと試みた. 雄性白鼠より肝ミトコンドリアを分離, 酸素電極を用いて酸素消費を測定し, ADPを加えてADP/O, RCRを測定した. この系にCa2+を0.01, 0.05, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4mM加え, 基質のコハク酸を1mM, 10mMとし, さらに10mMのカルニチンを加えた場合, トルブタマイドの脱共役作用がどう変動するかを検討した. またagingしたミト瓢ンドリアを使用するとどのような影響がでるかを検討した. その結果, 以下の成績が得られた.
1.Ca2+を0.1~0.4mM共存させると, 高濃度になるほど少量のトルブタマイドが完全脱共役を示した. しかし0.01, 0.05mMCa2+はこのような作用を示さなかった.
2. カルチニンを共存させた場合, 1mMでは全く効果がなかったが, 5mMおよび10mnMでは濃度に応じてトルブタマイドの効果を増強した. また基質であるコハク酸の濃度が10mMから1mMに減少すると, 完全脱共役に必要なトルブタマイドの濃度が100mg%から70mg%に低下した.
3. トルブタマイドの効果を増強する条件, すなわち10mMカルニチンの共存および基質濃度の1mMへの減少において, さらにCa2+をそれ自体で促進効果のない0.05mM添加すると, わずか5mg%のトルブタマイドが有意な効果を示し, 10mg%トルブタマイドで完全脱共役を示した.
4. 30分間室温でagingしたミトコンドリアを使用すると, カルニチンが存在しなくても0.05mMのCa2+添加により7mg%のトルブタマイドが完全脱共役を示した.
以上の成績から, トラブタマイドとCa2+は脱共役作用において相加的に作用することが明らかとなった. またトルブタマイドの脱共役作用は基質濃度の減少, 5, 10mMカルニチンの共存によって増加することが判明した. またこのような条件下でもトルブタマイドはCa2+と相加的に作用し, 従来より少量の10mg%トルブタマイドが完全脱共役作用を示した.

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