糖尿病
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一次性糖尿病 (II型) におけるPFD試験の検討
富名腰 徹若杉 英之澄井 俊彦梅田 文夫井林 博
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1983 年 26 巻 8 号 p. 815-821

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抄録

一次性糖尿病症例におけるPFD試験成績の低下所見が膵外分泌機能の障害に基づくか否かについて, PA8A吸収試験を併用すると共に肝・腎機能を検索し, また血中PABA濃度を測定して検討を加えた.その結果,
1) II型糖尿病53症例 (血清クレアチニン<2mg/dl) のPFD試験成績は平均 (M±SD) 67.8±13.8%で, 健康対照群82.8±4.6%(n=16) に比して, 慢性膵炎確診症例66.3±11.9%(n=21) と同様に有意の低下 (p<0.001) を示した.
2) 次にII型糖尿病ではPABA吸収試験も同様の有意低下を示し,[PABA-PFD] 値は平均12.5±6, 4%(n=29) で, 慢性膵炎確診症例 (20.3±5.1%, n=10) とは異なり, 対照群 (8.8±3.0%, n=7) に比し, 有意差を認めなかった.
3) II型糖尿病のPFD試験成績はPSP試験 (15分値) およびクレアチニンクリアランスと有意の正相関 (r=0.68および0.61) を示した.これら腎機能に比し, 肝機能 (GOT, GPT) の影響は著明でなかった,
4) PFD試験時の血中PABA濃度は健康対照群に比べII型糖尿病では2時間目以降に高値傾向を示し, 特に腎機能障害併発症例では有意の高値を認めた.更に, PABA吸収試験時の血中濃度測定結果は, 糖尿病症例においてPABAの吸収障害がみられないことを示唆した.
以上の成績は, II型糖尿病症例においてしばしばPFD試験成績の低下が認められるが必ずしも膵外分泌機能障害を反映するものではなく腎機能障害の併発に基づく場合のあることを示すものである.

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