糖尿病
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糖尿病患者にみられる骨病変に関する研究
佐藤 利彦大橋 誠山本 雅規藤井 暁関 淳一和田 正久
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1983 年 26 巻 9 号 p. 921-930

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抄録

糖尿病と骨減少症との関連を検索するために, 糖尿病患者90例 (IDDM32例, NIDDM58例), 健常者65例を対象に, photon absorptiometryを用いて, 橈骨骨塩含量 (RMC) を測定し, 合併症を含む糖尿病の各種臨床像との関連を中心に検討した.なお糖尿病患者における骨塩減少の指標としては, 各患者のRMC値を同性・同年代の健常人のRMCの平均値で除した値 (以下%RMC) を用いた.
その結果, IDDM群とNIDDM群とでは, 各々の臨床像とRMCとの関係に異なる傾向が認められた.すなわち, IDDM群では, 罹病期間の長い例程%RMCは低値を示す傾向がみられ (P<0.05), 血糖のコントロール不良例, 増殖性網膜症及び著明な神経病変を有する例で有意に骨塩減少を認めた.又, 下肢のMönckeberg型動脈石灰化を有する例でも,%RMCは, 低値を示す傾向がみられた (P<0.05).
一方, NIDDM群では, 糖尿病の各臨床像と%RMCとの間に一定の関係を認めなかった.
血清Ca, P, ALP, PTHの値は,%RMC値にかかわらず, いずれも正常範囲であったが, 尿中のCa排泄量は, 空腹時血糖値が高い程増加しており (P<0.01), 糖尿病患者にみられる骨減少症の一因に, 代謝失調の持続, 及びそれに伴う尿中Ca排出の増加が関与している可能性が示唆された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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