Wistar系正常血圧ラットおよびspontaneously hypertensive rats (SHRと略す) 8~9週齢, 体重237±13g (M±SD) を対象にインスリン (1匹当り2.4単位を投与) 低血糖発作と脳動脈内皮の超微形態学的変化について検討した.
1) 死亡率は対照正常血圧ラット群で16, 7%, SHR群で100.0%と有意差が見られた (P<0.01).
2) 無処置の正常血圧ラット, SHRの走査型電顕所見で脳動脈内皮細胞のmicrovilliやmarginal foldsに形態学的相違が見られた.
3) インスリン投与後, 両群に内皮細胞の剥離, 消失やmargiml foldsに沿って小孔の出現が見られた.正常血圧ラットよりSHRにこれらの損傷が著明であった.
4) インスリン投与により脳動脈内皮の透過型電顕像で正常内皮細胞に隣接して原形質内の微細構造のほとんどが消失した内皮細胞が散見され, 赤血球の血管外への遊出も認められた.また同時に, 赤血球構造にも55.0%に変化が見られた.
以上の結果からインスリン低血糖時には, 幾つかの脳血管内皮細胞の超微細構造に破綻が生じ細胞接合部から血液成分の血管外漏出や出血が惹起され, 特にこれらの障害はSHRに重篤であることが明らかにされた.