糖尿病
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心筋梗塞, 高浸透圧性非ケトン性昏睡に乳酸アシドーシスを合併した糖尿病の1例
細島 弘行山本 郁夫木越 俊和内田 健三森本 真平
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1984 年 27 巻 2 号 p. 131-138

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抄録

心筋梗塞, 高浸透圧性非ケトン性昏睡に乳酸アシドーシスを合併した糖尿病の1例を報告した.症例は67歳の女性で, 15年前からacetohexamide 1gr/日を断続的に服用していた.昨年12月からころんで動けなくなり, 当日家人の呼びかけに対して応答なく昏睡状態で緊急入院した.アセトン臭なく, 低体温低血圧, 脱水が著明で, 下肢にチアノーゼと皮下出血を認めた.検査所見で高血糖, 高浸透圧血症と著明なアシドーシスを呈したがケトン体は弱陽性であった.さらに高Na, C1血症のほか乳酸値174.8mg/dlと著明な高乳酸血症を示した.心電図では前壁中隔の梗塞像であった.入院後, インスリン少量持続注入, 補液, 重炭酸ソーダの投与, 陽圧呼吸による管理のほか, ジギタリス, フロセミドの投与を行なったが27時間後死亡した.この症例は, 高血糖, 感染, 脱水状態に心筋梗塞発作をおこし, さらにDICによると思われる出血が進行し, これらの諸因子が急激に心筋のみならず末梢組織のanoxiaをきたし乳酸アシドーシスに至ったと推測された.さらに本例は高浸透圧性非ケトン性糖尿病昏睡を伴っており, 乳酸アシドーシスの合併は極めて稀であると考えられた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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