糖尿病
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Epstein-Barrウイルス感染が発症に関与したと考えられるI型糖尿病の1例
河原 啓広瀬 良和長谷川 修前田 昌良老籾 宗忠馬場 茂明
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1984 年 27 巻 5 号 p. 629-637

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抄録
I型糖尿病の成因として, ウィルス感染, 自己免疫あるいは両者の関与を考察した報告は数多くあるが, Epstein-Barrウイルス (EBV) の感染により急性発症したI型糖尿病の報告は少ない.今回, EBVの感染後に, 急性発症したと思われるI型糖尿病を経験したので報告する.症例は23歳の女性.口渇, 多飲, 体重減少を主訴として入院した.約10日前に発疹, 筋肉痛, 全身倦怠感が出現していた.入院時の血糖は640mg/dlで尿中ケトン体の排出を認め, 糖尿病性ケトーシスと考え, 入院後直ちに, インスリン少量持続注入療法 (5単位/時間) を開始し, 全身状態は改善した.その後, インスリン療法 (NPH52単位, レギュラー8単位) を継続中である.入院時の血清学的検査上, GOT, GPTの軽度上昇, ICAの陽性, 抗平滑筋抗体の陽性を示した.入院後, EBV/VCAに対するIgG抗体は80倍より320倍に上昇, EBV/EAに対するIgG抗体は10倍より20倍に上昇し, その後感度以下に低下し, EBVによる感染症と考えた.一方, 本例では糖尿病の既往がなく, 感染の回復期に糖尿病の発症がみられたこと, 著明な高血糖とC-ペプチドの反応がみられなかったことから, EBVの感染が誘因となってIDDMを発症したものと考えた.なお, 抗マイクロゾーム抗体, 抗サイログロブリン抗体などの自己抗体は陰性.HLAは, A9, Bw22, Cw1, Cw4, DR4, MT3であった.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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