抄録
高カリウム (K) 血症を呈し, 腎不全および高血糖がなく, 内分泌学的検査 (2時間立位負荷試験, ACTH試験) から低レニン性低アルドステロン症 (HRHA) と考えられた糖尿病 (DM) 10例を臨床的に分析した, HRHA10例では,(1) I型DM1例, II型DM9例,(2) 54±11歳,(3) 男8例, 女2例,(4) 経過年数11土4年,(5) 高血圧9例,(高血圧の遺伝歴を有する症例4例, 高血圧先行例2例, 高血圧とDM同時発見例3例),(6) 尿蛋白3g/日以上2例, 1-3g/日4例, 1g/日未満4例, クレアチニン・クリアランス47±7ml/min, 血清クレアチニン1.6±02mg/dl,(7) アキレス腱反射と膝蓋腱反射消失および知覚神経障害1G例, 起立性低血圧 (OH) 6例, OHを有する6例の血漿ノルエピネフリンは, OHのない4例に比し, 立位負荷に対し, 低反応 (p<0.01) を示したが, 血漿レニン, アルドステロンおよび血清Kには差がなかった,(8) 眼底はScottII, IIIaが4例, Scott IIIb以上が6例,(9) 食事療法のみが2例, 経口血糖降下剤2例, インスリン6例.糖尿病にみられるHRHAは, 経過年数の長い高齢男性に多く, 合併症では高血圧 (特に本態性高血圧) および腎機能障害と密接に関連していることが示唆された.