1984 年 27 巻 sppl1 号 p. 3-8
ブタインスリンの修飾によって作った半合成ヒトインスリン (semisynthetic human insulin, SHI) の有効性, 安全性および抗原性を, インスリン治療歴のない1型および2型糖尿病患者を対象として, 高度精製ブタインスリン (purified pork insulin, PPI) と比較検討した. 薬剤としては, ヒトインスリン, ブタインスリンともにActrapidおよびMonotard製剤 (NOVO) を使用した. インスリン製剤の選択, 注射回数および投与量は各症例ごとに主治医が決定した. 血糖, 尿糖, HbA1およびインスリン抗体を定期的に検査した. ヒトインスリン投与群 (59例) およびブタインスリン投与群 (35例) において, その分布, 病型, 空腹時血糖, HbA1, 肥満度および糖尿病性合併症に両群間で差異はなかった.
試験開始後36週までの検討では, ヒトインスリン投与群およびブタインスリン投与群の間で, インスリン投与量, 空腹時血糖およびHbA1において有意な差は認められなかった.
試験開始後8週頃から, 両群ともインスリン抗体が出現しはじめた. 総インスリン抗体は経過とともに上昇がみられたが, IgE抗体は2~3例において一時的な上昇が認められたのみであった. ヒトインスリン投与群, ブタインスリン投与群で抗体産生に有意な差はみられなかった. また, 両群どちらにも重篤な副作用は認められなかった. 従って, 半合成ヒトインスリン (SHI) は高度精製ブタインスリンと同様, 安全でかつ有効であると思われる. また, ヒトインスリンの抗原性はブタインスリンと同様低かった.