1985 年 28 巻 2 号 p. 163-168
20年以上経過した25歳未満発症糖尿病者において糖尿病性網膜症, 腎症の進展度およびHbA1との関係を検討した.
対象は東京女子医科大学糖尿病センター外来通院中の25歳未満発症で罹病年数20年以上の糖尿病者47名で, インスリン依存型糖尿病者 (IDDM) 29名 (男性8名, 女性21名, 発症年齢の平均9.4歳, 平均羅病年数24.2年), インスリン非依存型糖尿病者 (NIDDM) 18名 (男性12名, 女性6名, 発症年齢の平均19.3歳平均罹病年数23.6年) である.
糖尿病性網膜症の進展度は, 罹病年数15年未満では NIDDMに網膜症が多く (IDDM 35.0%, NIDDM63.6%), 罹病年数20年以上ではIDDM全例, NIDDM 90.0%に網膜症が認められ, また, IDDMに増殖型網膜症が多い傾向がみられた (増殖型網膜症: IDDM 26.3%, NIDDM 18.2%). 失明者はIDDM13.8%, NIDDM 5.6%にみられた. 糖尿病性腎症の進展度は, IDDM. MDDMとも罹病年数10年以上15年未満で腎症が発現し (IDDM13.0%, NIDDM7.7%), 罹病年数20年以上ではIDDM31.0%(透析13.8%), NIDDM 16.7%(透析 5.6%) でIDDMに腎症が進展しやすい傾向がみられた. 最近4年間にみるHbA1の平均値は, 増殖型網膜症または腎症を認めた糖尿病者ではIDDM 11.3%, NIDDM 12.9%, 増殖型網膜症および腎症を認めない糖尿病者ではIDDM 10.8%, NIDDM 9.9%で, 重症合併症のある糖尿病者においてHbA1が高かった (NIDDM: P< 0.005).