糖尿病
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絶食状態における骨格筋のインスリン作用に関する研究 (I)
インスリン受容体及び糖取り込みへの影響
前川 聡
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1985 年 28 巻 4 号 p. 571-577

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抄録

絶食状態の骨格筋におけるインスリン作用の変化を検討するため, ラット単離sdeus筋を用いてインスリン結合 (率) およびインスリンの2-deoxyglucose (2 DOG) 取り込み促進作用を測定し, 絶食の影響を検討した.
48時間の絶食によりsoleus筋へのインスリン結合 (率) はすべてのインスリン濃度で増加し, これはScatchard解析から受容体数の増加によるものであった.この受容体数の増加は, 低インスリン血症に伴う受容体のupregulationの機構に起因すると考えられた.
絶食群の2DOG取り込みは, インスリン無添加時では, 対照群との間に差を認めなかったが, そのインスリン反応性は低下し, Hanesplotの解析から絶食群では糖輸送系のVmaxの減少が認められた.一方, インスリンの容量反応曲線をインスリンの最大効果を100%として表わすと, 絶食群で左方移動を認めた.これはインスリン結合 (率) の増加によるものと考えられた。
このように, 絶食状態の糖輸送系においてインスリンの反応曲線は左方へ移行するが, Vmaxは低下し, 結果として骨格筋において, 糖取り込みのインスリンに対する反応性は低下していた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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