糖尿病
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インスリン反応と糖尿病への悪化
長期経過観察によるRisk Factorの検討
佐々木 陽松宮 和人荒尾 雅代堀内 成人長谷川 恭一上原 ます子
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1985 年 28 巻 6 号 p. 761-767

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抄録

健康診断においてIRI検査を受けた糖代謝正常型および境界型のもの165名を平均6.5年間追跡し, 追跡開始時点におけるインスリン反応およびその他の因子と糖尿病への悪化との関係について検討した.
1) Insnlin Area (IA) は血糖2時間値≧40mg/dl, WHO基準IGT, 肥満者, 男に高く, 糖尿病の家族歴のあるものに低い. 一方, insulinogenic index 30分値 (II) は2時間値≧140mg/dl, IGT, 家族歴のあるもの, 女に高かった.
2) 糖尿病型への悪化率は全体で8.5%, 血糖2時間値, 家族歴, 肥満と有意の関係が認められた.
3) インスリン反応との関係は, IIが低下するほど糖尿病型への悪化率が高くなるが, IAとは関係しなかった. また, II<0.5とII>0.5の2群に分けて各因子との関係をみると, 血糖2時間値の高いもの, 肥満者はIIが高くても悪化率が高くなる傾向を示した.
4) 生命表方式による10年間の累積悪化率をみると, II≧0.5群の11.4%に対して, II<0.5群では22.4%に達した.
以上の結果, 正常型および境界型から糖尿病型への悪化にはインスリンの初期分泌の低下が強く影響するが, インスリン分泌量とは関係しないことが明らかとなった, また, 家族歴はIIの低下と関連した危険因子であり, 一方糖代謝異常, 肥満はインスリン反応とは独立した危険因子であることが示唆された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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