1985 年 28 巻 9 号 p. 1089-1094
Hemdytic streptococcus gangreneは, 1924年Meleneyによりβ-streptococcusを起炎菌とするひとつの独立疾患として初めて起載されたが, 後に主病変は筋膜であるとして, necrotizing fasciitisと呼ばれるようになった. われわれは, 昭和37年に発見された77歳のインスリン非依存型糖尿病男性の肛門周囲に本症を併発し, 診断後直ちに切開, debridementを施行して創部の治癒経過は良好であったが, カンジダ性肺炎, 急性腎不全, 髄膜炎を併発して不幸な転帰をとった1例を経験した.
本症は稀な疾患であるが, 予後不良のため早期診断, 早期治療が必要であるといわれている. また本症が, 糖尿病に合併した場合, 糖尿病性壊疽や蜂窩織炎との鑑別が必要であり, 糖尿病が本症の予後をさらに悪化させる因子となるため注意を要する.