糖尿病
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高浸透圧性非ケトン性糖尿病昏睡に著明な呼吸不全を伴った1例
原 英夫中村 稔永渕 正法津田 泰夫中野 修治高上 悦志古賀 龍彦仁保 喜之
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1986 年 29 巻 5 号 p. 475-480

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抄録

高浸透圧性非ケトン性糖尿病昏睡に呼吸不全を合併し, 陽圧呼吸により救命することができ, また同時に高CPK, 高アルドラービ血症を伴った1例を報告する. 症例は, 29歳の男性. 体重100kg (肥満度67%) と著明な肥満を認めた. 1年前に尿糖を指摘されたが放置. 昭和58年10月初旬頃より口渇・全身倦怠感が出現。徐々に増強し10月27口意識障害をきたし, 当科緊急入院となった. 入院時昏迷不穏状態でアセトン臭なく, 低血圧・脱水が著明であった. 検査所見で, 高血糖・高浸透圧血症を呈し, 尿中ケトン体は陰性であった. 動脈血ガスは, 代謝性アシドーシスを呈した. また高BUN, 高クレアチニン血症の他, 高CPK, 高アルドラーゼ血症を認めた。高浸透圧性非ケトン性糖尿病昏睡と診断し, インスリン少量持続注入, 補液を開始したが, 呼吸不全が出現し, 血液ガスは, 混合性アシドーシスへと進行した. このため呼気終末陽圧呼吸 (PEEP) を開始し, 血液ガスの改善とともに血糖値の低下をみた. BUN, クレァチニン, CPK, アルドラーゼも経過とともに漸減し, 正常化した. 呼吸不全の原因としては, 著明な肥満, イレウスによる横隔膜の圧迫に基づく拘束性呼吸障害が考えられた. 本症例のごとく, 呼吸不全を伴う糖尿病昏睡に対しては, 陽圧呼吸が極めて有効であると考えられる.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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