糖尿病
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抗膵島細胞膜抗体 (ICSA) が高頻度に出現したI型糖尿病の1家系
稙田 太郎
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1987 年 30 巻 1 号 p. 41-46

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抄録

親子5人中, 父親 (インスリン非依存型糖尿病) を除く4人 (母親, 1卵性双生児同胞, 姉) の血中に抗膵島細胞膜抗体 (ICSA) が出現し, うち母親と双生児の弟 (発端者) にインスリン依存型糖尿病 (IDDM) の発症をみた1家系を報告した.非糖尿病の姉にはすでに高度の耐糖能低下とインスリン分泌能の障害が認められ, 双生児の兄にも経過を通じとくに静脈内グルコース負荷試験 (25gIVGTT) において, インスリン分泌の初期相に著明な低下が示された.ICSAが持続陽性であることと併せ, これら同胞もIDDM発症のhigh-risk subjectsであることが推定される.ICSA陽性の4例には1型糖尿病に特徴とされるHLAタイプは認められなかったが, 同胞3人のそれは検索しえた範囲では全く同一であり, 一方, 母親はこれら同胞と3つのHLA抗原タイプ (A26, Bw40, DR1) を共有していた.本家系には自己免疫性内分泌疾患の合併や臓器特異抗体は証明されなかった. 以上, 本家系におけるICSAの集積と1型糖尿病の発症には, 個体の遺伝的素因の関与が強く示唆される.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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