1976年より1985年までの10年間に経験した糖尿病患者19名 (IDDM 4名, NIDDM 15名) の25分娩 (総分娩7,187例の0.35%) について報告した.
糖尿病発症年齢, 罹病期間, 分娩時年齢はそれぞれ平均25.4歳, 4.0年, 29.8歳であった。妊娠中には80%の症例がインスリンで治療され, 妊娠経過とともに注射回数, 投与量ともに増加傾向をみた.CSIIは6例 (IDDM 5例, NIDDM 1例) に使用した.IDDM例でのインスリン投与量は妊娠前平均35.6単位より分娩時平均56.0単位に増加した.治療法が進歩し1982年以降の15例における妊娠後期の空腹時血糖は平均90.2mg/dlに低下したが妊娠初期の血糖値には改善の余地がある.糖尿病性網膜症の合併は25例中2例で妊娠中3例, 分娩後2例が増悪をみた.妊娠性合併症 (8例, 32%) は最近減少傾向にある.
平均分娩週数は37.3週で最近延長傾向にあり帝王切開率 (52%) も低下傾向にある.
既往妊娠歴における児の転帰は著しく不良であったが, 当院での分娩における周産期死亡は2例 (8%) で1982年以降周産期死亡例はない.奇形は3例 (無脳児, 難聴, 尿道下裂+肘屈曲拘縮), 妊娠37週以降の出生児の生下時体重は平均3,214g, HFD (7児, 28%), 4kg以上の巨大児 (2児, 8%) は最近減少している.HFD, 新生児低血糖は母の妊娠後期空腹時血糖が100mg/dl以下の症例では低頻度であった。これらのデータはこれまでの諸報告と一致するものであり, 最近 (1982年以後) ではコントロールの改善, 産科的モニターの進歩によりpcrinatal problcmsが著減してきたことがうかがわれる.
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