抄録
Nonenzymatic glycationの指標としてfructose-lysine (Amadori化合物) を酸性加水分解して生ずるfurosineを高速液体クロマトグラフィーで測定し, Amador三化合物の特異的測定法として用いた.生体から容易に採取しうる組織蛋白として毛髪を選択し, nonenzymatic glycation測定に応用した、頭皮からの距離に基づいた毛髪各部位のfurosineと毛髪採取時の空腹時血糖, 安定型HbA1cとの相関を検討した.頭皮から0.5-1.5cm, 1.5-2.5cm, 2.5-3.5cmの各部位の毛髪furosineと安定型HbA1cとの間に有意の正相関がみられた.とくに理論上毛髪を採取した時点の安定型HbA1cと同じ時点を表現していると考えられる頭皮から0.5-1.5cmの部位のfurosine値と安定型HbA1c値との間に最も良好な相関がみられた.
この事実は毛髪furosineは頭皮からの距離と毛髪の成長速度を考慮すると過去の任意の時点の血糖コントロールを示す可能性が考えられ, 糖尿病の過去の血糖コントロールの有用な指標になることが判明した.