糖尿病
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単離灌流ラット肝, 腎, 心, 骨格筋におけるインスリン動態とブドウ糖代謝
茂久田 修
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1987 年 30 巻 6 号 p. 489-495

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抄録

組織におけるインスリン分解とブドウ糖代謝に及ぼすインスリン作用との関連性を検討するため, 種々の濃度のインスリンを含む灌流液でラット肝, 腎, 心, 骨格筋 (後肢) 摘出標本を灌流し, インスリンクリアランス, ブドウ糖の取り込み, 放出および酸化を観察した. 灌流液には10mMブドウ糖, 2%ウシ血清アルブミンを含むKrcbs-Ringer重炭酸緩衝液 (pH7.4) を用い, 各臓器をヒトの生理的血流量の3倍の灌流速度 (肝, 腎, 心, 骨格筋それぞれ1.8, 12.6, 2.5, 0.08ml/min/g) で60分間再循環灌流した. 各臓器はいずれも添加インスリン濃度に正比例してインスリンを除去し, 肝, 腎, 心, 骨格筋のインスリンクリアランスは157, 1063,143および6.3μl/min/gであった. 心および骨格筋におけるブドウ糖の取り込みと酸化はインスリン添加により増加し, 添加インスリン濃度2000μU/mlまで用量反応的に増加した. 肝でのブドウ糖出納に及ぼすインスリン作用は, 添加インスリン濃度100μU/mlで最大に達した. 腎でのブドウ糖代謝にはインスリン添加による影響がほとんど認められなかった. 以上より, 糖代謝に及ぼすインスリンの濃度効果には各臓器により差異が認められたが, インスリン分解動態には各臓器による差異を認めず, また肝および腎がインスリン分解に大きい役割を果たしている1つの要因として臓器血流量の大きいことが関与していると考えられた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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