抄録
1980年に東京女子医科大学糖尿病センターおよび同大学小児科に登録された25歳未満発症糖尿病者320名のうち, 1986年まで追跡調査が可能であった236名を調査の対象とし病型別に網膜症の進展を調査した.
対象236名の病型別患者数はIDDM 167名 (男69名, 女98名), NIDDM 69名 (男25名, 女44名) であった.1986年までの平均罹病期間はIDDM 15.1±6.1年 [mean±SD], NIDDM 15.3±5.9年であったが, 1980年から1986年までのHbA1平均値はIDDM 11.6±1.7%[mean±SD], NIDDM 10.4±2.0%で, IDDMが著明に高値を示した (p<0.01).網膜症の頻度はIDDMでは1980年度の40.1%が1986年度では56.9%となった.一方, NIDDMではそれぞれ52.1%, 56.5%であった.NIDDMではIDDMより早期に網膜症を多く認めるが, IDDMではかえって罹病期間の長期化により網膜症の出現頻度が増加した.