糖尿病
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糖尿病における尿, 血清中のN-acetyl-β-Dglucosaminidase (NAG) 活性値およびNAG Isoenzymeパターンとその臨床的意義
海原 昭人水谷 義晴山野 利尚大野 文俊
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1988 年 31 巻 7 号 p. 561-568

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抄録

糖尿病における尿, 血清のNAG活性値とNAG isoenzyme値を糖尿病合併症, 血糖調節状態等と関連して総合的に検討した.対象は, 糖尿病 (NIDDM) 50例と健常人15例である.特にNAG isoenzyme分離には2% agarose電気泳動-MCP-NAG反応 (陰極側からNAG I, II, III. IがB formに相当) を用いた.NIDDMのNAG活性値は, 尿, 血清ともに健常人に比し有意に高値 (p<0.01, p<0.001) であった.尿NAG活性値の上昇は, 有合併症群とくに腎症群で著しく, 長期的な良好血糖調節で低下傾向を示した.糖尿病の尿isoenzyme比率は, 健常人に比しNAG Iの増加が特徴であったが, NAG活性値へ換算するとNAG I, II値の上昇となり, 特にNAG Iは腎障害などの細小血管障害, NAG IIはFBSと相関 (p<0.01, p<0.05) した.他方, 血清NAG活性値は合併症の有無に関係なく総て高値で, 人工膵島下でのみ一時的な低下を示し, 長期の通常血糖調節では不変であった.但し, 血清NAG isoenzyme比率は健常人と差を認めなかった.この血清での高値は, 特定の臓器由来でなく糖尿病自体の広汎な代謝異常の表現と推測した.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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