膵臓手術直後における血糖制御に要するインスリン注入量に関して, 人工膵島を適用してI群: 膵部分切除 (n=5, 但し3例の膵部分自家移植例を含む), II群: 膵全摘 (n=6) に分け比較検討を行った.I, II群の間において, 術前の年齢・体重・50g OGTTでの耐糖能.インスリン分泌能に, 有意差は認めなかった.手術終了直後より, ブドウ糖10g/時を含む補液下での血糖制御を, 人工膵島を用いて行ったところ, 両群ともに8時間後には血糖値は正常域に維持され, インスリン注入量も安定化した.両群において, 血糖応答動態に有意差は認めなかったが, この間の平均インスリン注入量は, I群: 2.7×B (1×B=0.225mU/kg/min), II群: 7.6×Bと両群間で有意差を認めた (p<0.01).
また, この間両群ともに総カテコラミン, コーチゾル血中レベルは, 健常者安静時に比して著明な高値を呈したが, 両群間にては差がなく, グルカゴン, 成長ホルモンにおいても両群間に有意差を認めなかった.しかしながら, 血中C-ペプチドは, I群において有意に高値を示した.
今回の検討より, 残存膵を有するものが術後血糖制御においてもインスリン必要量が少ないことが明らかとなった.
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