1989 年 32 巻 10 号 p. 717-720
1980年に網膜症を認めなかった25歳未満発症インスリン依存型糖尿病者 (IDDM) 98名 (男46名, 女52名, 糖尿病の罹病期間14.2年 [1988年], HbA1 11.9%[9年間の平均値]) について8年間追跡調査を行い, Life-table analysisによる網膜症の進展を調べた.1988年における網膜症の頻度は, 網膜症なし61%[罹病期間13.2年, HbA1 11.4%], 網膜症あり39%[罹病期間15.8年, HbA1 12.6%] であった.網膜症ありの患者のうちわけは, 単純網膜症38%, 増殖網膜症1%であった.この対象98名について, Life-table analysisによる網膜症の進展と罹病期間との関係を推測したところ, IDDM患者の半数に網膜症が出現すると想定される罹病期間は13年であった.また, 罹病期間が8年 (調査時年齢の平均17歳) から11年 (20歳) にかけて網膜症を認めるものが急増していることが注目された.