1989 年 32 巻 12 号 p. 893-899
血液透析患者14例 [糖尿病7例 (DN) 非糖尿病7例 (ND)] にて透析前後での赤血球インスリン特異的結合率 (SB) の変動を検討した. 透析前, SBは正常対照 (N/C) に比し有意な低下を認めた [DN3.4±0.5, ND42±0.8vsN/C7.9±0.4%(P<0.05)]. 透析後, SBの上昇を認めた [DNで有意;5.8±0.8%(P<0.05)]. Scatchard解析よりこの変化はインスリン受容体の親和性の上昇によると考えられた. このSB変動の機序の検討のため, in vitroで尿毒症血清および尿毒症物質の一つであるメチルグアニジン (MG) の添加実験を行った. 血清添加時SBは対照と比較し有意に低下 (P<0.05) し, 交差実験では血清24時間添加と比し有意に改善した (P<0.05). MG添加時もSBは濃度依存性に低下し, 交差実験では改善傾向を認めた. 以上より尿毒症血清に含まれるMGをはじめとする種々の尿毒症因子が赤血球インスリン受容体の結合能を阻害する可能性が示唆された.