糖尿病
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ラット培養メサンギウム細胞のミオイノシトール代謝に及ぼすグルコースの影響について
有村 哲朗
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1989 年 32 巻 2 号 p. 105-111

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抄録

近年, 糖尿病ラットにおいて糸球体メサンギウム細胞の機能異常が報告されている. さらに, 本細胞にポリオール経路の存在が確認されたことより, 糖尿病状態における本細胞の機能異常とポリオール代謝・ミオイノシトール代謝異常との関連が示唆されている. そこで, メサンギウム細胞のミオイノシトール代謝に注目し, 本代謝経路の特徴およびグルコースによる影響について検討した.
メサンギウム細胞を高グルコール濃度条件下 (55mM) に孵置したところ, 細胞内ミオイノシトール含量は11.0±1.0から2.8±0.5nmol/mg prot. と有意に減少した. 一方, 細胞内ソルビトール含量は前値の12倍と有意に増加した. これら変化の程度は細胞外グルコース濃度依存性であるとともに, アルドース還元酵素阻害剤 (ソルビニール) 添加により是正された.
次いで, ミオイノシトール含量低下の機構を調べるためにミオノシトール取り込み機構について検討した. メサンギウム細胞のミオイノシトール取り込みはNa依存性かつ担体依存性と考えられた. しかも, ミオイノシトール取り込みは細胞外グルコース濃度依存性に抑制されたがアルドース還元酵素阻害剤によっては影響されず, このグルコースによるミオイノシトール取り込みの抑制様式はキネティックスの解析から “競合阻害” と考えられた.
以上より, 高グルコース濃度条件下におけるメサンギウム細胞のミオイノシトール含量の低下はミオイノシトール取り込みの低下を反映していると思われるが, 一部ソルビトール産生を介する機序の存在が示唆された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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