1989 年 32 巻 5 号 p. 313-318
正脂血症を呈する糖尿病患者88例のリポ蛋白組成を検討した. 症例はその治療法によって3群に分け,: インスリン治療 (Insulin群), 経口血糖降下剤群 (SU群), 食事療法群 (Diet群), 血中コレステロール (Ch) とトリグリセライド (Tg) は各々, 250と150mg/dl以下に限定した. 年齢と比体重を症例にあわせた正脂血症健常人をコントロール (Control群) とした. 血中総ChとTgは4群で差はなく, 血中アポ蛋白 (apo) Bは糖尿病各群とも高く, SU群ではその上昇はcontrol群に比し有意であった. 超低比重リポ蛋白 (VLDL, 比重1.019以下) 分画のCh, TgおよびCh/Tg, さらに低比重リポ蛋白 (LDL) 中のChとCh/apo Bは4群間でまったく差を認めなかった. 高比重リポ蛋白 (HDL)-Chは4群間で差を認めなかったがapo A I, A IIとも糖尿病3群においては有意に低値でHDL-Ch/apo A IはDiet群とInsulin群で有意に高値を示した. 以上, 正脂血症の糖尿病患者ではLDL粒子のCh-enrichmentは存在しなかったが, HDL粒子については, その質的異常の存在がうかがわれた.