1989 年 32 巻 9 号 p. 657-662
超低比重リボ蛋白一中性脂肪 (TG) の血中代謝動態に及ぼす高インスリン血症の影響を, インスリン (6U/日) を皮下あるいは腹腔内に14日間持続注入したラットにおいて検討した.腹腔群と比較すると, 皮下群では同じインスリン投与量にもかかわらず, 末梢インスリンと脂肪組織におけるリボ蛋白リパーゼ活性は高値で, 血糖と血清TGは低値であった.一方, 門脈内インスリン値と肝臓からのTG分泌率は両群でほぼ同程度に増加した.また, 血中のFFA, グルカゴンおよびカテコラミンに両群間で差を認めなかった.以上の事実は皮下群ではTG除去率がTG分泌率よりも, より一層亢進していたということ, および腹腔群ではTG分泌率と除去率がほぼ同程度に亢進していたということを意味する.以上, 等量のインスリンでも, 異なった経路で投与すると, 2つの異なった組織において異なった程度の代謝効果をひきおこし, ひいては超低比重リボ蛋白の血中動態に異なった効果を惹起する。