1991 年 34 巻 2 号 p. 141-147
糖尿病性網膜症の発症・進展と成長ホルモンの関連性をprospectiveに明らかにするために検討した.糖尿病性網膜症を認めないか, 有していても極軽度なインスリン非依存性糖尿病患者48名を対象として運動負荷試験を施行し, その直後の成長ホルモンの分泌反応より, 5ng/ml未満の群 (1群) 27名と5ng/ml以上の群 (II群) 21名とに分類した.両群では罹病期間, 空腹時血糖, HbA1, 血圧に有意差を認めなかった.それぞれの群について1年間ごとに5年間網膜症の発症・進展について追跡調査した.その結果, 追跡調査5年後では網膜症の進展した例はI群で1例 (3.7%) であったが, II群では8例 (38.1%) であった (P<0.01).両群では5年間, 空腹時血糖HbA1, 血圧, 総コレステロールに有意差を認めなかった.
本研究は両群の糖尿病性網膜症の発症・進展の差には運動後の成長ホルモンの過分泌傾向が強く関連していることを示唆している.