1993 年 36 巻 9 号 p. 741-746
症例は44歳, 男性. 1年前に糖尿病と診断されたが放置していた. 腰痛, 右下肢痛を主訴に入院した. 高血糖, 白血球増加, CRP陽性, 赤沈亢進を認め, 尿定量培養にて黄色ブドウ球菌が検出された. CTで右腸腰筋膿瘍を認めた. 抗生物質投与により症状は軽快し1カ月後には退院となった. 退院2カ月後より再び腰痛および左下肢痛出現し, 再入院となった. CTにて左腸腰筋膿瘍を認めたため, 抗生物質の投与を行なったが軽快せず, 切開排膿術を施行したところ1カ月後にはCTにて腸腰筋膿瘍の消失を確認した. 本例は血糖調節不良のインスリン非依存型糖尿病に尿路感染症から腸腰筋膿瘍を発症し, さらに対側に再発したものと考えられた. 糖尿病患者に腸腰筋膿瘍を合併した症例には, 充分な注意が必要であると考えられた.