糖尿病合併症成因に関与する赤血球膜脂質過酸化のメカニズムを明らかにするために, ヒト赤血球を試験管内で高濃度グルコースに暴露し, 過酸化水素で誘発される膜脂質過酸化反応とこれに対する各種抗酸化剤の影響について検討した.赤血球を27.8mMおよび55.5mMグルコースに暴露すると, 糖化蛋白の増加に平行して膜脂質過酸化が増強した.過酸化は, 赤血球内還元型グルタチオン濃度をチオール化合物により増加させると増強され, thiol blockerで低下させると抑制されたが, この状態でもグルコース濃度に依存する増強が認められた.過酸化はビタミンEでほぼ完全に抑制され, hydroxyl radical消去剤, 金属キレート剤によっても有意に抑制された.高濃度グルコースによる過酸化促進にはグルタチオン依存性の機構とグリケーション自体による機構があり, いずれの機構も赤血球膜内におけるフリーラジカル連鎖反応を介する酸化障害と示唆された.