抄録
高グルコース濃度条件にて培養したマクロファージ細胞株 (J774) におけるコレステロールェステル (CE) 合成能及び, HDLのCE蓄積に対する作用を検討した.33mMグルコース条件 (HG) 培養J774細胞では, アセチルLDL存在下のCE合成能は11mMグルコース条件 (NG) に比較して, 2.1培増加していた.HDL3 (200μg/ml) 添加によりCE合成は, NG細胞では対照の21.8±3.5%まで低下したが, HG細胞では56.0±3.4%と抑制作用の減弱を認めた.この時, 浸透圧対照細胞は, NG細胞と同様であった.細胞からのHDLによるコレステロールeffluxも, HG細胞では有意に減少していた.アシルCoAコレステロールアシルトランスフェラーゼ活性は, HG細胞で1.7倍亢進しており, 他のエステラーゼ活性には差を認めなかった.これらの事は高グルコース状態がマクロファージ細胞をCEを蓄積する状態に誘導し, 糖尿病における動脈硬化症の発症・進展に促進的に作用する可能性を示している.