1996 年 39 巻 6 号 p. 431-437
症例は18歳男性, 元々肥満ぎみだった, 1993年春より口渇出現し清涼飲料水を1日に3L以上摂取していた. 10月初めより呼吸困難出現さらに不穏状態となり14日緊急入院BMIは44.8kg/m2と著しい肥満. 血糖1040mg/dl, ケトン体も著しい高値で, 著明な代謝性アシドーシスを呈していた. ICA, IAA, 抗GAD65抗体はいずれも陰性でHLAタイプはIDDM疾患抵抗性であった. インスリン投与や補液施行するも呼吸状態悪化し死亡した. 剖検所見では両側肺動脈本幹より広範な肺動脈血栓症を認め, これが直接死因と考えられた. 膵は全体にランゲルハンス島数の減少と膵島の萎縮を認めたが膵島炎は認めなかった. アルデヒドーフクシン染色では膵島B細胞の著明な脱落を認めた. 腎には軽度の糖尿病性腎症を認めた. いわゆる “ペットボトル症候群” の膵病理所見に関する報告はなく, 貴重な症例と思われた.