糖尿病
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39 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 岩崎 直子, 河村 真規子, 大河原 久子, 苅部 幸代, Nancy J. Cox, Graeme I. Bell, 大森 安恵
    1996 年 39 巻 6 号 p. 409-416
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    近年, リンケージ解析の一種であるsib-pair法を用いて, 本態性高血圧症やインスリン依存型糖尿病 (IDDM) の原因遺伝子または責任遺伝子座位が明らかにされ, 多因子遺伝疾患の原因遺伝子の解析に本法が極めて有力であることが示された. 我々はsib-pair法を用いて日本人インスリン非依存型糖尿病 (NIDDM) の原因遺伝子の解析を行った. 検討した結果, 既知の9個の糖尿病関連遺伝子 (アデノシンデアミナーゼ, グルコキナーゼ, インスリン, インスリンレセプター, 膵β細胞糖輸送坦体, ホルモン前駆体切断酵素PC2, 膵β細胞ATPチャネル, 脂肪酸結合蛋白およびグリコーゲンシンターゼの各遺伝子) はいずれもNIDDMの主要な原因である可能性が極めて低いと考えられた. 一方, 第2染色体上のマーカー遺伝子であるD2S434においてNIDDMと連鎖の可能性が示唆された (p<0.05). さらに多数例の検討を重ねることにより, 本法を用いて日本人NIDDMの原因遺伝子が同定される可能性が示された.
  • 糖尿病における血糖コントロールの新規な指標
    小林 邦夫, 五十君 裕玄, 河野 斉
    1996 年 39 巻 6 号 p. 417-424
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    毛髪蛋白の糖化度を反映する血糖コントロールの新規な指標 (毛髪の糖化度指数) を考案した. 糖化度指数 (A390/A412) は毛髪蛋白中の糖化蛋白とシスチンの呈色反応から得た両吸光度 (A390, 糖化蛋白;A412, シスチン) を用いて算出した. 高血糖を伴った病態動物 (マウス, ラット) 群, 糖尿病患者群の糖化度指数は正常対照群に比べて著明に高値 (2.0-6.0倍) を示した (p<0.01). 糖尿病患者群, 正常者群の糖化度指数 (mean±SD) は, それぞれ3, 00±0.96 (n=22), 1.51±0.45 (n=34) であった. また, これらの糖化度指数 (y) はグリコヘモグロビン (HbA1c) 値 (x) と高い相関を示した (r=0.83=34, p<0.01). 3種類の試料測定における測定精度 (同時再現性, CV) は6.7-9.4%(n=各10) であった. 正常, 病態動物の背毛, ヒト臨床試料 (頭髪) の測定成績から, 本糖化度指数は過去の血糖コントロール状態を知る有用な指標となる可能性が示された.
  • 辻井 悟, 大石 まり子, 赤澤 好温, 葛谷 英嗣
    1996 年 39 巻 6 号 p. 425-430
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    Charcot-Marie-Tooth病 (CMT) 1型にICA, 抗GAD抗体陽性のインスリン依存型糖尿病 (IDDM) を発症した症例を報告する. 症例は37歳, 男性. 入院1カ月前より, 口渇, 多尿, 体重減少を認め, 血糖528mg/dl, HbA1c12.8%のため入院. 尖足, 鶏歩, 下肢の筋力低下・筋萎縮, 腱反射低下を認め, 母親とその姉妹にCMT病があり, 神経伝導速度の著明な低下からCMT病1型と診断した. ICAと抗GAD抗体が強陽性に認められ, ケトン体の著増, 血中・尿中のC-ペプチドの著減より, IDDMと考えられた. インスリン治療により, 血糖は100mg/dl程度に改善し, インスリン1日注射量が8単位となり退院退院後血糖が次第に上昇し, 約6カ月後には26単位が必要となった. CMT病と糖尿病の合併は報告例が少ないが, インスリン非依存型の病型が多く, IDDMは稀である. 本症例のような抗GAD抗体陽性のIDDMの報告は見られず, CMT病にIDDMを発症する病態の発生機序について興味が持たれる.
  • 澤田 雅彦, 丸山 太郎, 北澤 吉明, 前田 憲男, 岩崎 良二, 鈴木 裕也
    1996 年 39 巻 6 号 p. 431-437
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は18歳男性, 元々肥満ぎみだった, 1993年春より口渇出現し清涼飲料水を1日に3L以上摂取していた. 10月初めより呼吸困難出現さらに不穏状態となり14日緊急入院BMIは44.8kg/m2と著しい肥満. 血糖1040mg/dl, ケトン体も著しい高値で, 著明な代謝性アシドーシスを呈していた. ICA, IAA, 抗GAD65抗体はいずれも陰性でHLAタイプはIDDM疾患抵抗性であった. インスリン投与や補液施行するも呼吸状態悪化し死亡した. 剖検所見では両側肺動脈本幹より広範な肺動脈血栓症を認め, これが直接死因と考えられた. 膵は全体にランゲルハンス島数の減少と膵島の萎縮を認めたが膵島炎は認めなかった. アルデヒドーフクシン染色では膵島B細胞の著明な脱落を認めた. 腎には軽度の糖尿病性腎症を認めた. いわゆる “ペットボトル症候群” の膵病理所見に関する報告はなく, 貴重な症例と思われた.
  • 梅野 美一, 小河 一彦, 城島 三記代, 太田 善郎
    1996 年 39 巻 6 号 p. 439-444
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は72歳, 男性. 38歳の時, 糖尿病 (DM) の治療中に重症筋無力症 (MG) を発症. Neostigmineの投与により改善したが, その後血糖コントCロールは不良であった. 1994年, 夕方著明となる全身の脱力で再入院入院時HbA1c9.3%.edraphonium 10 mg静注で眼瞼下垂は改善し, 抗アセチルコリン受容体抗体陽性よりMGIIB型と診断した.ambenonium chloride とprednisoloneの併用により症状は改善し, インスリンにより血糖コントロール良好であったが, 1995年4月, 左下腹部に腫瘤が出現穿刺にて膿を確認. 起炎菌は, 菌の形態学的性状, 生化学的性状よりNocardia farcinica と同定された. 腹壁膿瘍以外に肺炎, 脳膿瘍の所見が認められ, さらに肺結核も併発したが, 抗生剤の継続投与および切開排膿により改善した. DM患者に副腎皮質ホルモンを投与する場合には, ノカルジア症の併発にも注意する必要があると考えられた.
  • 1996 年 39 巻 6 号 p. 445-484
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 島 健二, 遠藤 治郎, 老籾 宗忠, 大森 安恵, 片山 善章, 金澤 康徳, 河合 忠, 河盛 隆造, 菅野 剛史, 清瀬 闊, 桑島 ...
    1996 年 39 巻 6 号 p. 485-493
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    より広範囲の施設を対象に, 種々の測定法でのグリコヘモグロビン (GHb) 値の精度管理調査 (第3回) を1995年9月に行った. この際濃度の異なる全血2検体および凍結乾燥品2検体を測定試料として用いた. また, 日本糖尿病学会製 (JDS) 標品準拠HPLC測定値とDiabetes Control and Complications Trial (DCCT) 値との整合性についても検討した. 1424施設のうち, 最終的評価は1399施設 (HPLC法1080, 免疫阻害比濁法133, アフィニティ法186) からの報告結果に基づいた. その結果は以下のようであった.
    1. 全データーをまとめての施設間差はCV7.1%~12.8%であった.
    2. 測定法別CVはHPLC法3.7%~6.6%, 免疫阻害比濁法7.6%~11.7%, アフィニテイ法5.6%~6.4%であった. 全血検体の平均GHb値はHPLC法 (4.7±0.31%) と免疫阻害比濁法 (4.9±0.56%) は比較的良く類似したが, アフィニティ法 (5.5±0.31%) は高値に偏した.
    3. JDS標品, あるいはそれに準拠して値付けした標品を用いて補正した測定値の施設問差はCV4.6%~7.8%, 一方, それ以外の方法で補正した場合のCVは8.3%~15.9%であった.
    4. JDS標品準拠HPLC法測定値 [東ソー社製HPLC (HLC-723GHbIII): Y1, 京都第一科学社製HPLC (HA-8131): Y2] はDCCT値 (X) とよく合致した (Y1=0.984X-0.228, r=0.998: Y2=0.972X-9.052, r=0.997) 種々の測定法によるGHb測定値を統一するには, JDS標品, あるいはそれから値付けした標品を用い実測値を補正するreference systemを採用することが必要である.
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