1997 年 40 巻 12 号 p. 807-812
症例は76歳女性. 72歳時に乳癌にて左乳房切除また20年来の糖尿病を有し, そのコントロールは不良であった. 1994年突然, 左足部の疼痛が出現し他院受診. 単純X線で異常ないため経過観察されていたが改善なく, 翌年MRI施行したところ左距骨の壊死を認め本院入院となった. 骨壊死の原因としては骨髄炎や乳癌骨転移が考えられたが, 炎症所見や他の転移巣等はなくいずれも否定的であったため, 無腐性距骨壊死と診断された. 一般に本症は骨折や外傷などに引き続いて発症することが知られているが, 症例では先行する外傷等は認めなかった. 一方, 糖尿病の骨病変ではCharcot関節が有名であり, その発症は無症状に緩慢に経過するとされていたが, 近年画像検査の発達により初期より様々な骨変化をきたすことが知られてきた: 症例もこの一亜型と考え, 免荷装具使用したところ症状の改善を認め, 糖尿病患者の骨関節病変をみるうえで留意すべき症例と考えられた.