糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
インスリン非依存性糖尿病の血清トリグリセライド値上昇に関与する腎症の重要性
守友 康記平野 勉芳野 原柏崎 耕一辻 正富永野 聖司足立 満
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 40 巻 7 号 p. 395-402

詳細
抄録

現在治療中のインスリン非依存性糖尿病 (NIDDM) を対象に血清トリグリセライド (TG) の上昇に糖尿病性腎症がいかに重要な影響を及ぼすかについて検討した. 年齢40-79歳, 平均Body Mass Index (BMI) が, 22-24の非糖尿病対照群66名とNIDDM274名をアルブミン尿量の程度により正常アルブミン尿, 微量アルブミン尿, 顕性アルブミン尿群に分類した. 腎症を有さない糖尿病のTG (110±6mg/dl) は対照群 (120±7mg/dl) とほぼ同等であったが, 微量アルブミン尿群で157±8mg/dl, 顕性アルブミン尿群で169±11mg/dlと糖尿病性腎症を合併すると有意に上昇した. HbA1cおよび空腹時血糖 (FPG) は糖尿病性腎症で有意な上昇を示さなかった. TGと独立して有意な相関関係にあったのは尿アルブミン量およびBMIであり血糖コントロールとは相関関係が成立しなかった. 入院中の53名のNIDDMにGlucose, Insulin, Octreotideを持続静脈内注入してインスリン抵抗性を測定するSteady-State Plasma Glucose (SSPG) 法を施行した. TGの上昇を示した顕性アルブミン尿群でのSSPG値は正常アルブミン尿群に比し有意な高値を示さず (264±40vs250±21mg/dl), TGは尿アルブミン量とのみ相関してSSPGとは相関しなかった. 以上の結果より少なくとも本邦における中高年層のNIDDMで血清TGが上昇する機序には前臨床期を含めた糖尿病性腎症の合併が大きく関与している可能性が示唆された.

著者関連情報
© 社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top