糖尿病
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早期糖尿病性腎症における尿中カッパライトチェーンの意義
5年間のFollow-upによる検討
家城 恭彦高桜 英輔大沢 謙三
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1997 年 40 巻 7 号 p. 409-416

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抄録

顕性蛋白尿を認めないインスリン非依存型糖尿病患者104名を対象に, 尿中カッパライトチェーン (KLC) を尿中アルブミン (ALB) とともに5年間にわたり追跡調査した. 尿中ALB-クレアチニン (Cr) 比 (ALB-Crratio, ACR) は, Normoalbuminuria (Normo: ACR<20mg/gCr) 例, Microalbuminuria (Micro: 20≦ACR<150mg/gCr) 例のいずれにおいても, 尿中KLC-Cr比 (KLC-Crratio, KCR) 正常群 (<5.8mg/gCr) では5年間に有意な変動を認めなかったのに対し, KCR上昇群 (≧5.8mg/gCr) では3年目以降有意に増加した. また, 5年間のACRの変化を追跡し, Normo, Micro, Macroalbuminuria (Macro: ACR≧150mg/gCr) のどれに移行したかをみると, ACR悪化例はKCR正常群では67例中8例 (11.9%) であったのに対し, KCR上昇群では37例中10例 (27.0%) と有意に多く, 逆にACR改善例はKCR上昇群では1例もなかったのに対し, KCR正常群では67例中7例 (10.4%) と有意に多かった. さらに, 重回帰分析の結果, 年齢, 糖尿病罹病期間, body mass index (BMI), HbA1c, および平均血圧 (MBP) の各要因で補正した後のKCRは, 有意に5年後のACRに影響していた. 一方KCRは, ほぼ全経過を通してACRのNormo例に対しMicro例が有意に高値を示したが, いずれも開始時に対し有意な変動は認めなかった. 以上より, 尿中KLCの増加から将来の尿中ALBの増加を予測しうることから, 尿中KLCは早期腎症の発症ならびに進展予測の有用な指標である可能性が示唆された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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