1999 年 42 巻 11 号 p. 931-936
症例は56歳, 男性. 41歳頃より糖尿病で加療されていたが, コントロールは不良であった. 1997年10月30日, 前立腺肥大症による尿閉のため, 膀胱カテーテルを留置された. 同日より発熱を認め尿路感染症の診断で当科に入院. ピペラシリンナトリウム (PIPC) の投与により治療を開始したが, 入院第5病日に呼吸困難が出現, 胸部X線および胸部X線CTにて多発性結節状陰影を認め, 尿路感染症に伴う敗血症性肺塞栓症と診断した. 尿および血液培養よりStaphylococcus aureusを検出, 抗生物質を感受性のあるパニペネム/ベタミプロン (PAPM/BP) に変更したが臨床症状ならびに検査成績は改善せず, 硫酸アミカシン (AMK), 1日1, 200mgを追加投与したところ症状は軽快し, 胸部X線および胸部X線CTの結節状陰影は改善した. その後, 糖尿病は食事療法のみで血糖コントロール良好となり退院した. 糖尿病患者における敗血症性肺塞栓症の報告は少なく, 文献的考察を加え報告する.