2000 年 43 巻 8 号 p. 687-693
症例は男性, 69歳 (1985年) 時にインスリン非依存型糖尿病と診断され, 74歳時からインスリン治療を続けていた. 72歳時にC型慢性肝炎を指摘された. 1993年12月肝機能の悪化を認め入院し, 80mgのグリチルリチン (GR) の連日投与を開始した. 投与後30日目から偽性アルドステロン症と低血糖発作を発症し, インスリンとGRの減量により血圧と血糖値は正常化した. インスリンを減量しGRを再投与したところ, 再び低血糖を来した. GRの減量後には低血糖発作はなかったが, 1994年8月に急性心不全により死亡した. 病理解剖で活動性慢性C型肝炎と糖尿病性腎症を認めた. GRには糖代謝に影響する多くの薬理学的作用があるが多臓器の機能低下を伴つた高齢者の糖尿病患者にGRとインスリンを投与する場合には, 血糖値の変動に注意する必要があると考えられた.