2001 年 44 巻 1 号 p. 23-29
虚血性心疾患 (IHD), 脳梗塞 (CD), 閉塞性動脈硬化症 (ASO) の頻度を827例の2型糖尿病患者で調べ, 網膜症合併例の予後に, これらマクロアンギオパチー (MA) が, どの様に影響するかを検討した. 網膜症が無い (N群, 495例), 単純網膜症 (S群, 216例), 増殖網膜症 (P群, 116例) の3群に分けた. 合併するMAの数をMAスコアとし, 全身の動脈硬化の指標とした. 網膜症の進展と共にIHD, Cl, ASOの頻度はいすれも有意に増加し, P群のMAスコアが最も高値であった. 約4年の観察期間におけるN, S, P群の死亡率 (/1000人・年) は各々5.6, 243, 66.8で, 増殖網膜症例に心血管死や突然死が多い傾向を認めた. 多変量解析では腎症, 自律神経障害とMAスコア (特にIHDとASO) が独立して生命予後と関連した. 増殖網膜症例には血糖コントロール, 他の動脈硬化危険因子の制御と共に, 非侵襲的検査を用いた積極的な全身のMAの評価が生命予後改善の上からも重要と考えられた.