経過中に重篤な肝障害を呈し, 種々治療により回復し, 腹腔鏡下に肝生検を行い得た1型糖尿病症例について報告する. 症例は27歳女性. 24歳時に糖尿病性ケトアシドーシスにて急性発症し, 以降頻回インスリン注射療法にて経過観察されていた. ボグリボース (0.6mg/日), エパルレスタット (150mg/日) 内服開始それぞれ11カ月後, 3カ月後に肝機能障害 (GPT: 880IU/
l, GOT: 484IU/
l) が出現するも, ウイルス性, 自己免疫性, アルコール性肝障害はそれぞれ検査所見並びに臨床経過より否定的であった.
入院後, 内服中止にも関わらず凝固機能低下 (PT40, 1%, HPT31.9%), 総ビリルビン値の上昇 (3, 1mg/dl) を認めたため, 既に始めていたグルカゴン-インスリン療法 (G-1療法) に加え, プロスタグランディン療法 (PGE1療法) を開始した. その結果, 肝機能, 凝固機能は, 徐々に回復し4カ月後にはほぼ正常化した. 腹腔鏡による肉眼所見より広範な肝細胞壊死が生じた事が推測された. また, 生検肝組織所見では一部線維化と炎症細胞浸潤を認めたが, 両薬剤に対するDLSTが陰性であったことなどから肝障害の原因は不明であった.
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