糖尿病
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44 巻, 1 号
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  • 職域におけるアンケート調査と定期検診結果の解析
    日高 秀樹, 古澤 俊一, 辻中 克昌, 山崎 義光, 堀 正二
    2001 年 44 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2001/01/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    糖尿病管理に関する問題点を明らかにすることを目的に職域の糖尿病患者調査を行なった.1997年度の定期健康診断 (14, 073人) にて, 「糖尿病」の判定が “治療中” または “要治療” であった40歳以上の組合員本人498名 (男性486名, 女性12名) を対象に受診中の医療機関における診療内容に関するアンケートを行った (回収率88%).定期的通院患者は回答者の8196であり, 通院中断患者, 非回答患者の血糖コントロールは不良であった (平均HbA1c8、1%).中断の理由は「自己判断」が多かった.医療機関によるコントロールの差は明らかでなく, 学会認定施設, 認定医の存在も統計的には差を認めなかった.「糖尿病の専門家」, 総合病院を受診中の患者はインスリン治療が多く, 認定医のいる施設では足の診察をより多く受けていたが, その頻度は低かった.わが国の一般的な糖尿病の診療水準は現時点で十分とは考えられず, 治療・管理に関するガイドラインの周知と実行が対策のひとつと考えられる.
  • 石井 均, 山本 壽一, 大橋 靖雄
    2001 年 44 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2001/01/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    インスリン治療が患者のQOL (health-related quality of life) に与える影響を測定するための質問表の開発を目的とする研究を行った.インスリン治療に関する質問表 (ITR-QOL) は, 23項目の質問から構成され, 因子分析の結果, 社会的活動, 日常生活, 身体症状, インスリン治療への感情, のサブスケールから構成されていることが検証された.再現性および内部-貫性とも良好であった.内容妥当性は数人の糖尿病専門家によって確認された.併存妥当性については, 糖尿病治療満足度質問表 (DTSQ) およびウエルビーイング質問表など評価が確立された質問表と, 予想される方向で関連性が証明された.以上の結果より, ITR-QOLは, インスリン治療に伴う患者のQOLを測定する質問表として有用であることが証明された.
  • 石井 均, 山本 壽一, 大橋 靖雄
    2001 年 44 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2001/01/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    インスリン治療に関するQOL質問表 (LTR-QOL) を用いて, インスリン治療患者のQOLに影響を与える臨床的要因について検討した, 病型別では, 1型糖尿病患者は2型糖尿病患者に比してQOLが低値であった. 主観的な血糖コントロール状態のよい患者のQOLは高く, 重症低血糖経験者のQOLは大きく低下していた.頻回注射は2型患者ではQOLを低下させた.食事-注射時間はQOLに影響し, 注射希望時間と指示時間が短いほどQOLは高かった.また, QOLが高いほど注射時間および注射回数の実行度が高かった.この研究により, インスリン治療にかかわるQOLを規定する要因が明らかとなり, かつITR-QOLが測定法として有用なものであることが証明された.
  • 心, 脳, 下肢の大血管合併症の影響
    紀田 康雄, 柏木 厚典, 吉川 隆一
    2001 年 44 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2001/01/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患 (IHD), 脳梗塞 (CD), 閉塞性動脈硬化症 (ASO) の頻度を827例の2型糖尿病患者で調べ, 網膜症合併例の予後に, これらマクロアンギオパチー (MA) が, どの様に影響するかを検討した. 網膜症が無い (N群, 495例), 単純網膜症 (S群, 216例), 増殖網膜症 (P群, 116例) の3群に分けた. 合併するMAの数をMAスコアとし, 全身の動脈硬化の指標とした. 網膜症の進展と共にIHD, Cl, ASOの頻度はいすれも有意に増加し, P群のMAスコアが最も高値であった. 約4年の観察期間におけるN, S, P群の死亡率 (/1000人・年) は各々5.6, 243, 66.8で, 増殖網膜症例に心血管死や突然死が多い傾向を認めた. 多変量解析では腎症, 自律神経障害とMAスコア (特にIHDとASO) が独立して生命予後と関連した. 増殖網膜症例には血糖コントロール, 他の動脈硬化危険因子の制御と共に, 非侵襲的検査を用いた積極的な全身のMAの評価が生命予後改善の上からも重要と考えられた.
  • 勝田 秀紀, 田代 輝明, 田中 利明, 山口 真哉, 小澤 幸彦, 丸山 雅弘, 片平 宏, 滝澤 誠, 吉元 勝彦, 板垣 英二, 神谷 ...
    2001 年 44 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2001/01/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    二症例は24歳男性, 20歳時に体重減少を認め, 糖尿病と蛋白尿を同時に指摘された.当初経口血糖降下剤を投与されていたが次第に血糖コントロールは悪化した. 22歳よりインスリン治療を行っていたものの高血糖が持続するため当科に紹介された. 網膜症・神経障害は認めないが, 血清クレアチニンの上昇と約2g/日の蛋白尿を認めた. 低身長, 感音性難聴を伴っており, 末梢血のミトコンドリア (mt) 遺伝子3243変異 (15%) を認めた. また患者の母親, 妹にも同様の変異 (それぞれ196, 18%) を認めた, 腎生検組織は糖尿病性腎症の所見に乏しく, 巣状糸球体硬化症 (FGS) の所見を示し, 腎組織のmt遺伝子変異は4396で末梢血の約3倍と高率であった.
    以上より, 本症の腎障害の成因にmt遺伝子異常が関与している可能性が強く示唆された.また, MRIで小脳・脳幹部の萎縮が認められ, ミトコンドリア脳筋症への移行も予想されるため注意深い経過観察が必要と思われた.
  • 吉崎 健, 市田 和裕, 大橋 誠, 野村 誠, 鎌田 武信
    2001 年 44 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2001/01/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    経過中に重篤な肝障害を呈し, 種々治療により回復し, 腹腔鏡下に肝生検を行い得た1型糖尿病症例について報告する. 症例は27歳女性. 24歳時に糖尿病性ケトアシドーシスにて急性発症し, 以降頻回インスリン注射療法にて経過観察されていた. ボグリボース (0.6mg/日), エパルレスタット (150mg/日) 内服開始それぞれ11カ月後, 3カ月後に肝機能障害 (GPT: 880IU/l, GOT: 484IU/l) が出現するも, ウイルス性, 自己免疫性, アルコール性肝障害はそれぞれ検査所見並びに臨床経過より否定的であった.
    入院後, 内服中止にも関わらず凝固機能低下 (PT40, 1%, HPT31.9%), 総ビリルビン値の上昇 (3, 1mg/dl) を認めたため, 既に始めていたグルカゴン-インスリン療法 (G-1療法) に加え, プロスタグランディン療法 (PGE1療法) を開始した. その結果, 肝機能, 凝固機能は, 徐々に回復し4カ月後にはほぼ正常化した. 腹腔鏡による肉眼所見より広範な肝細胞壊死が生じた事が推測された. また, 生検肝組織所見では一部線維化と炎症細胞浸潤を認めたが, 両薬剤に対するDLSTが陰性であったことなどから肝障害の原因は不明であった.
  • 平田 明, 片桐 尚, 涌井 一郎, 小林 勲, 杉本 不二稚, 内藤 哲也, 植木 匡, 斉藤 六温, 関矢 忠愛, 森田 哲郎, 木村 ...
    2001 年 44 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2001/01/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は50歳の男性で1995年から繰り返す低血糖発作の精査目的にて入院となった. インスリン過剰分泌が認められインスリノーマが疑われた, 腹部エコー, 腹部CT, 腹部血管造影で腫瘍を指摘できなかった. ASVS (arterial stimulation and venous sampling) で脾動脈でのCa負荷がIRI値の優位な上昇を認め, 膵体尾部に腫瘍があると推測された. さらに脾動脈近位部, 大膵体動脈分枝部, 脾動脈中間, 脾動脈末梢の4箇所でASVSを行った結累, 脾動脈近位で優位にIRI値の上昇があり, その末梢ではIRI値上昇がないことから腫瘍は脾動脈近位部から大膵体動脈分枝部までの領域にあると同定された. 手術にて同部位に径2cmの腫瘍が認められ核出術を行った. 本症例のような2cmと比較的大きな腫瘍でも血管に乏しい場合血管造影で診断が困難であるためASVSによる部位診断が必要であり, また, 正確な局在診断を同定する上で超選択的なASVSは極めて有効な検査であると考えられた.
  • 丸山 太郎, 春日 明, 小沢 ゆか子, 仲里 朝周, 岩崎 良二, 鈴木 裕也
    2001 年 44 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2001/01/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    GAD65抗体陽性のインスリン非依存糖尿病 (NIDDM) は高率にインスリン依存に進行することが知られ, GAD65抗体陽性NIDDM患者は1型糖尿病のnon-insulin-requiring stageにあるものと考えられる. しかし, GAD65抗体陽性であっても, 低抗体価の患者は食事療法やSU剤で長期間にわたって良好なコントロールが維持され, 内因性インスリン分泌の低下も認められないことが多く, 全てのGAD65抗体陽性NIDDMを1型糖尿病とすべきかは問題である. 私たちはインスリン治療を必要としないGAD65抗体低抗体価陽性糖尿病患者の膵島所見を膵癌にて切除された膵組織において観察し得た. 膵頭周囲に軽度リンパ球浸潤を示す膵島周囲炎を20%に認めたが, インスリン分泌細胞の著明な減少は認められなかった. 低抗体価のGAD65抗体陽性の意義については今後更に検討が必要であり, 現時点では [型糖尿病の疑いとして取り扱うべきであると考えられた.
  • Quality of Lifeに影響を与える患者背景因子と合併症
    佐野 浩斎, 浅尾 啓子, 松島 雅人, 縣 俊彦, 日下 正久, 佐々木 敏行, 谷島 雄一郎, 山本 泉, 清水 英佑, 田嶼 尚子
    2001 年 44 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2001/01/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    40歳以上の男性2型糖尿病患者239名を対象に, 患者背景因子と糖尿病合併症がquality of life (以下QOLと略す) に及ぼす影響を評価した. 重回帰モデルによる解析の結果, 患者背景では, 年齢が若いこと, 最終学歴が高校卒業またはそれ未満であること, 糖尿病罹病期間が長いこと, およびインスリン治療をしていることがQOL総得点の低いことと関連していた. 患者背景を調整すると, QOL総得点は, 蛋白尿, 糖尿病神経障害, および脳梗塞があるとき低かった. また, ドメイン別では, 「糖尿病による生活制限」で糖尿病神経障害および脳梗塞が, 「全体的な満足感」で脳梗塞が, 「糖尿病であることの心理的負担」で糖尿病神経障害および蛋白尿が, 「糖尿病の治療に関する満足感」で蛋白尿が低得点と関連した. 糖尿病合併症による身体的, 精神的, および社会的負担がQOLを低下させていると考えられた.
  • 柴崎 千絵里, 内潟 安子, 立松 栄次, 岩本 安彦
    2001 年 44 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2001/01/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    われわれは, 患者一人一人にあわせた栄養指導の重要性を検討するために, 実際に行った栄養指導を経時的に呈示する. 症例は, C型肝炎の後に糖尿病が発見された症例と, 糖尿病から糖尿病性腎症を併発し『糖腎食』(ここでは糖尿病食から腎臓食へ移行する間の食事のことをいう. 当院では, 糖尿病食, 糖腎食, 腎臓食という流れで進む) を導入することになった症例である. 2症例は老夫婦および高齢の一人暮らしであったが, 治療の一環として食習慣の変更を指示された. 本人の嗜好とこれまでの食事に対する知識を確認した上で, 新規の食事療法を段階的に, かつ本人の能力を確かめながら進めていった. その結果, 高齢ながらも食習慣の変更がなされ, 治療の一環として位置づけられた.
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