糖尿病
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典型的な糖尿病症状を呈さず, 胃腸症状のみで意識障害を呈した劇症1型糖尿病の1例
菅 順子井上 達秀福永 康智袴田 康弘榎本 哲也佐古 伊康
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2004 年 47 巻 1 号 p. 35-39

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抄録

症例は41歳, 女性. 2001年3月5日に食欲不振, 心窩部痛が出現し, 3月7日昼, 近医を受診したところ胃腸薬を投与された (初診時Na 125mEq/l). 典型的な糖尿病症状はなかったが, 夕食後急激に意識が低下したため救急外来を受診し, 血糖1, 240mg/dl, 尿ケトン4+, 動脈血pH6.93, HCO-32.3mmol/l, Na 116mEq/l, K6.7 mEq/lにより糖尿病性ケトアシドーシスと診断された. HbA1c 5.296, インスリン分泌の枯渇, 膵酵素のー過性上昇を認めたことより, 劇症1型糖尿病と考えられた. 劇症1型糖尿病では, アシドーシスや電解質異常による致死的不整脈, 妊娠の場合は流産の危険性が報告されている. 軽度の胃腸症状のみで, 典型的な糖尿病症状がない患者でも, 劇症1型糖尿病の場合があることを念頭におく必要があると考えられた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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