2004 年 47 巻 1 号 p. 41-44
症例は31歳, 女性.既往歴, 家族歴に特記事項なし.1995年6月, 低血糖昏睡 (血糖20mg/dl) にて入院.上腹部巨大腫瘤を触知.HBs抗原陰性, 同抗体陽性, HCV抗体陰性.AFP730,000ng/mlと著明な上昇あり.CTにて多発性肝腫瘍を認め, 針生検にて原発性未分化型肝細胞癌と診断.血清IGF-I値の低下と高分子型血清IGF-II値の中等度上昇を認め, 肝細胞癌による非ラ氏島細胞腫瘍由来低血糖 (non-islet cell tumor hypoglycemia;NICTH) と診断.遷延性意識障害を認め低血糖脳症と診断.抗癌剤動注療法後退院.1997年永眠.低血糖の鑑別診断に際しては, 40歳以下の若年症例においても, 非常に稀ではあるが肝細胞癌によるNICTHを考慮する必要がある.また, 近年の報告のように, 高分子型IGF-IIが肝細胞癌の増大に相加的に関与した可能性が推察された.