糖尿病
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肝膿瘍, 細菌性腹膜炎, 膿胸の発症機序としてbacterial translocationの関与が考えられた糖尿病患者の1例
小林 由佳妹尾 高宏長谷川 剛二中村 直登吉田 俊秀
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2004 年 47 巻 4 号 p. 297-301

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抄録

症例は48歳, 男性. 通院・服薬のコンプライアンスが悪く, 糖尿病のコントロール不良であった. 全身倦怠感を主訴に救急受診. 低栄養状態, 著明な炎症反応, 発熱があり, 腹部超音波, CTにて肝両葉多発性の腫瘤, 腹水, 腸管浮腫を認めた. 第3入院病日には, 多量の左胸水が出現した. 腹水, 胸水中より複数の腸管内常在菌が検出された. 特に腹水は性状が漏出性であり, 漏出性腹水の存在下に細菌性感染が続発したものと推察された. 以上より, 本症例は血糖コントロール不良な糖尿病, 低栄養状態を基礎に肝膿瘍, 細菌性腹膜炎, 膿胸を発症したものであり, 腸管浮腫が存在したことより, その感染経路としてbacterial transbcationの関与が考えられた. 血糖コントロール不良な糖尿病では, 感染経路としてbacterial translocationも考慮する必要がある.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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