抄録
副腎皮質糖質コルチコイド (グルココルチコイド) 投与により誘発される糖尿病, すなわちステロイド糖尿病はグルココルチコイドの最も頻度の高い副作用の一つである, その病因の一つはインスリン抵抗性とされている. 一方, 糖尿病の領域においてインスリン抵抗性改善薬のピオグリタゾンが臨床応用されている, 今回, 我々はステロイド糖尿病と考えられる40症例において無作為にピオグリタゾン投与群と非投与群, 各20症例ずつを割り付けし, 各群に対して投与前・6カ月後にブドウ糖負荷試験 (OGTT) を施行し, OGTTにおける血糖・血漿インスリン値の変化について検討した. その結果, 投与群ではピオグリタゾンの投与前・6カ月後で, HbA1cは有意に減少した (7.88±0.28% vs 6.64±0.10%, 投与前vs6カ月後, mean±SE), また, 骨格筋インスリン抵抗性に関連するOGTTの2時間値 (291.7±1336mg/dl vs 203.0±8.93mg/dl, 投与前vs6カ月後, mean±SE) 及び肝臓における糖新生九進を示すHOMA-R値 (3.36±0.28vs1.98±0.27, 投与前vs6カ月後, mean±SE) は有意に改善した. 以上より, ステロイド糖尿病に対してインスリン抵抗性改善薬であるピオグリタゾンの投与にて血糖コントロールおよびインスリン抵抗性の改善が示された. ピオグリタゾンはステロイド糖尿病に対して臨床的に有効であると考えられた.