2011 年 54 巻 p. 23-42
本論文では,東証業種別株価指数の推移データに因子分析を施した結果を用いて企業価値変動モデルを構築し,それに基づいてデフォルトのシナリオを発生させ,リスク尺度としてConditional Value-at-Riskを用いて与信の最適化を行った.これにより経済動向を示す共通因子の影響を,「共通因子の個数」と「共通因子と個別因子の影響の比を決めるパラメータ」の両者を変化させて観察した.解くべき最適化問題の規模はシナリオの個数に影響を受けるため,多数のシナリオを用いて問題を解くことは易しくないが,問題の構造を利用して,簡単な前処理と解法の工夫によって10万シナリオの問題を7秒程度で,50万シナリオの問題を35秒程度で解くことに成功した.