2017 年 60 巻 p. 100-112
従来の繰り返し囚人のジレンマゲームはフォーク定理に代表されるように,非支配戦略である協力行動Cが如何にして合理的選択の結果として実現し得るか,という文脈で定式化されてきた.これに対して本論文においては,プレイヤー2が支配戦略であるD戦略を選択した場合,直ちにゲームを中止する,というサンクションを課すルールを設定した非対称な繰り返し囚人のジレンマゲームにおいて,割引率δが十分1に近い時,プレイヤー1が常にD戦略を,プレイヤー2が常にC戦略を選択する戦略セット(all D,all C )がナッシュ均衡となり,プレイヤー1にとって最善のナッシュ均衡戦略となることを証明する.