債券投資に関する典型的な研究は割引債を対象にしているが,中長期の割引債は市場に存在しないため,実務への応用に課題を抱える.本稿では,実際に取引できる利付債を対象にした投資戦略を提案する.まず,本邦利付国債の観測価格と理論価格の差異をミスプライスと定義し,その統計的性質を考察する.次に,ミスプライスの平均回帰性や低相関性に着目し,ベンチマークとみなした最適割引債ポートフォリオに対する利付債ポートフォリオの構築方法,利付債のロングショート戦略について論じる.実証分析の結果,デュレーションが割引債に最も近い利付債へ投資,または,一定範囲内の利付債へ分散投資する手法がパッシブ運用として有効なこと,ミスプライスの割安な銘柄へ投資する手法がアクティブ運用として有効なことを見出した.また絶対収益型運用では,一定年限におけるロングショート取引のパフォーマンスが良好であることを明らかにした.