抄録
大腸菌のL-乾燥保存において,蒸留水を分散媒に用いてL-乾燥するとDNA一本鎖に切断が生じた.この乾燥過程で生じるDNA鎖切断は3%MSG添加リン酸カリウム緩衝液を分散媒に用いることで防止された。しかしながら同分散媒は乾燥標品を保存する過程で起こるDNA鎖切断防止には無効であった.分散媒に添加したthioureaおよびadonitolは保存過程で起こるDNA鎖切断を防止した.両化合物は生細胞の過酸化水素処理においても顕著な保護効果を有したことからラジカル除去剤として作用することによりDNA鎖の切断を防止するものと推察される.cysteineにはL-乾燥標品DNA鎖の切断を防止する作用は認められなかった.